「黒字化したい」という気持ちだけでは動けない理由
「黒字化したい」——その言葉の落とし穴
施設の経営者や現場責任者からよく聞く言葉があります。
「黒字化したい」 「稼働率を上げたい」 「このままではまずいとわかっている」
気持ちはある。危機感もある。でも、現場は動かない。
なぜでしょうか。
感情の言葉は行動の指示にならない
「黒字化したい」は感情の言葉であって、行動の指示ではないからです。
行き先を「南の方向」と言うようなものです。方向性はわかる。でも今日どこまで歩くか、何時間かけるか、どの道を通るかが決まっていない。だから足が動かない。
心理学の研究では「実行意図(Implementation Intention)」という概念があります。目標を「いつ・どこで・何をするか」という具体的な行動計画に落とし込まなければ、人はその目標に向けて行動できないというものです。
「黒字化したい」という目標は、実行意図になっていません。
だから、毎月の会議で同じことを話し合い、気づけば半年が過ぎている——これが多くの施設で起きているパターンです。
「数値+期限+行動」の3点セットに変換する
私が支援に入るとき、まず目標を「数値+期限+行動」の3点セットに変換します。
「黒字化したい」 →「3か月後に稼働率を80%以上にする」(数値+期限) →「そのために今週、担当ケアマネ3事業所を訪問する」(行動)
この3点が揃って初めて、「今日何をすべきか」が見えてきます。
さらに、週次ミーティングの議題も変わります。「今週どうだったか」の振り返りから、「今週の目標に向けて何をやるか」の計画へ。そのシフトが、現場の動き方を根本から変えます。
ある施設での変化
支援に入った当初、その施設には「とにかく利用者を増やしたい」という言葉しかありませんでした。
初日に行ったことは2つです。現状の稼働率データを整理すること。そして「3か月後の稼働率83%」という数値目標を決めること。
翌週から週次ミーティングの空気が変わりました。「今週は目標に対して3訪問できた」「来週はもう2件追加する」という会話が生まれ始めたのです。
「気持ち」が「行動」に変わる瞬間——それは数値と期限と行動が揃った瞬間です。
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